サステナ経営塾19期上期第1回レポート

株式会社オルタナは2023年4月19日に「サステナ経営塾」19期上期第1回をオンラインとリアルでハイブリッド開催しました。当日の模様は下記の通りです。

①サステナ経営検定3級テキスト ポイント解説

時間: 10:20~11:40
講師: 森 摂(株式会社オルタナ代表取締役/オルタナ編集長)

冒頭、企業のサステナビリティの担当者に対しては、社内でサステナビリティの重要性への理解を得るためのTipsを共有したのち、サステナ検定3級テキストのポイントを紹介した。

3級テキストにのみ出てくるテーマには、「コンプライアンス(狭義と広義)」「ステークホルダー」「NGO/NPOの存在」「国連グローバル・コンパクト」「世界の貧困と児童労働」がある。特に、コンプライアンス(3級テキストP.40)は「法令順守」だけではなく、社会の規範に背いたことをしないことの重要性を具体的な事例とともに紹介した。「ステークホルダー」には、将来世代や自然環境などの声なきステークホルダーも大事であることを補足した(3級テキストP.39)。また、「エンゲージメント」という英単語には「歯車の嚙み合わせ」の意味があることを紹介しながら、ステークホルダーエンゲージメントとは、企業が社会の中で歯車を円滑に嚙み合わせ中長期的に良好な関係を築くことと解説した。

そしてCSR/SDGs/ESGの基本的理解として、要請している主体や歴史的な成立の経緯などの違いは異なるものの、それら3つをまとめてサステナビリティ領域と称すると説明。SDGsの持続的開発の定義「将来世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすような開発(=発展)」というSDの部分が大事と説いた。また、国連グローバル・コンパクトや、SDGsの前身MDGsの提唱など、第7代国連事務総長のコフィ・アナン氏の4つの功績を紹介した。

②CSR/SDGs/ESGの基本的な理解

時間: 13:00~14:20
講師: 森 摂

第2講ではCSR、SDGs、ESGの基本について解説した。

世界のESG投資は、2020年時点で投資額全体の3分の1まで成長した。欧州では42%、米国では33%を占める。一方で日本は24%だった。こういった欧米に遅れをとった背景には、国内最大の運用機関であるGPIFがPRIの署名に遅れたことがある。GPIFが署名したのは、PRIが発行してから9年後の2015年だった。

森は「日本は世界のスタートダッシュに遅れる国になってしまった」と指摘する。菅義偉前首相が表明した「2050年カーボンニュートラル」も、世界ではすでに100カ国以上が表明した後のことだった。

「カーボンニュートラル」や「カーボンネットゼロ」といったそれぞれの用語の定義を理解することも重要になっている。「カーボンニュートラル」はGHGの排出量とクレジットなどでの吸収量が差し引きゼロであることを指す。それに対して、IPCCが定義した「カーボンネットゼロ」はスコープ1~3全てが必須対象として含まれ、1.5度目標に適合することなどが求められる。

企業がこれらの施策を進めていく際に有効な考え方がバックキャスティングだ。対義語であるフォアキャスティングは現在から未来への長期目標を定める方法に対して、バックキャスティングは未来の目標を定めてから現在からのロードマップを策定するやり方である。

企業はこういったリスクに取り組んでいくことで、新たな顧客を取り込むこともできる。これが「アウトサイド・イン」の考え方だ。代表的なのがオムロンで、同社は「ソーシャルニーズ創造」に取り組んできた。古今東西でこういった取り組みが行ってきた企業は、業界のトップ企業に成長している。

森は参加者に「社会ニーズをつかむことで新しい顧客をつかむことができる」と呼びかけた。

③ワークショップ: 未理解点の洗い出し

時間: 14:35~15:55
講師: 森 摂

ワークショップでは、オンラインと会場でそれぞれグループに分かれ、サステナブル経営に関する疑問点や課題などを話し合った。全体発表では、「なぜ日本はサステナビリティ領域で遅れているのか」、DEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)やGHG(温室効果ガス)排出量の算出方法に関して、意見交換を行った。

④サステナビリティの社内浸透

時間: 16:10~17:30
講師: 赤堀 久美子(リコージャパン株式会社 コーポレートコミュニケーション部 SDGs推進グループ リーダー)

コロナ禍以降、デジタルサービスを拡充するリコーグループでは事業活動を通じた社会課題の解決に力を入れる。SDGs/ESGを推進していく上で気を付けている点として次の4点を挙げた。

・経営戦略・システムに SDGs/ESG を組み込む
→経営の意思決定、目標設定、実績把握・開示、報酬制度への反映 「 掛け声よりも仕組み」
・自社の成長に繋がるSDGs/ESG の展開
→経営戦略や事業戦略を後押しする活動が重要 「 ESG のための ESG ではない」
・社員ひとりひとりへの落とし込み腹落ち感醸成
→活動を社員の「はたらき甲斐」や「元気」に繋げられるかが鍵 「 やらされでは続かない」
・SDGs/ESG のレベルアップとコミュニケーションが両輪
→優れた活動を行うだけでは評価されない、伝わらない。 「 ステークホルダーの視点に合わせた
コミュニケーション」

こうした考えをもとに、自社事業と対応するSDGs目標の選定、7つのマテリアリティ(重要課題)の特定を行った。全社の経営目標として、財務目標に加えてESG目標を持つ。ESG目標は「将来財務」と位置付ける。

ESG目標は全部で16個ある。各部門に対応する目標を落とし込み、社員一人ひとりの仕事と紐づけた。

SDGsキーパーソン制度にレポート勉強会も

リコーグループの販売子会社リコージャパンでは社内浸透を図るため多彩な取り組みを行う。CSR報告書をもとにした社内向け勉強会もその一つだ。2016年から全48支社で開いてきた。2020年以降はオンラインで行い、累計参加者数は1万人を超えた。

社内でサステナを推進する「SDGsキーパーソン制度」を立ち上げた。全国に530人(2023年3月時点)おり、取引先を巻き込みながらSDGsに対応した取り組みを社内で推進する。事業と社会課題解決の同軸化に向けて、社内で4段階のレベルに分け、状況を可視化した。