サステナ経営塾20期上期第1回レポート

株式会社オルタナは2024年4月17日に「サステナ経営塾」20期上期第1回をオンラインとリアルでハイブリッド開催しました。当日の模様は下記の通りです。

①サステナ経営検定3級テキスト ポイント解説

時間: 10:20~11:40

講師: 森 摂(株式会社オルタナ代表取締役/オルタナ編集長)

第1講には、オルタナの森摂編集長から、サステナ経営検定3級テキストのポイント解説を講義した。

・最初に、サステナ経営を「短期的な利益追求ではなく、中長期の視野に立って、財務領域と非財務領域の価値向上を同軸で目指すとともに、サステナビリティ(持続可能性)をあらゆる経営判断の局面において尊重し、社会に対する悪影響を減じるとともに、社会課題をビジネスで解決する努力をすること」と定義した。

・これまでの経営を否定するものではなく、ほんの少し、地軸の傾きの23.4度くらい、傾けていくやり方だと述べた。

・環境問題だけでなく、人権などさまざまな課題に取り組むことが会社の持続可能な成長につながり、早めにそうした課題に対処していくことが企業をサステナブルにしていく。これが経営塾の肝だと説明した。

・2級テキストより、3級テキストの方が詳しい項目として「コンプライアンス(狭義と広義)」「ステークホルダー/ステークホルダーエンゲージメント」「トリプルボトムライン」「国連グローバル・コンパクト」「グリーンウォッシュ」「海洋プラスチックごみ問題」と紹介した。

・特に、コンプライアンス(3級テキストP.20)については、狭義と広義のコンプライアンスがあることを説明し、法的制裁を伴う「ハードロー」だけでなく、法的責任を問われなくても「ソフトロー」を守らないことで世間やメディアから厳しい目で見られた複数の事例を挙げた。

・CSR/SDGs/ESGの基本的な理解とともに歴史的経緯を振り返った。1992年の地球サミットも重要なマイルストーンだったが、2015年はCGコード、SDGs採択、GPIFのPRIの署名、英国現代奴隷法施行、パリ協定の採択など、サステナビリティの転機の年になったと紹介した。

・SDGsについては言葉の認知は広がっているが、内容まで含めて人に説明できるほど熟知している人はそう多くない。「将来世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすような開発(=発展)」という定義とともに、目標年の2030年まで残り6年しかないことを確認した。

・そのほか、第7代国連事務総長のコフィ・アナン氏の4つの功績や、NGO/NPOが果たしてきた役割などにも触れ、NGOに勤務する受講者にも発言いただいた。

・気候変動は予想より10年早く進んでいるとして、各地の自然災害とともに先進国・新興国含めた首都の水没リスクなどにも触れた。そのほか、ダイベストメント、パーム油と児童労働、日本における現代奴隷、デカップリング、カーボン「ニュートラル」と「ネットゼロ」「脱炭素」の違いなど、重要キーワードについて概説した。

②CSR/SDGs/ESGの基本的な理解

時間: 13:00~14:20

講師: 森 摂

第2講では、オルタナ代表の森摂が登壇し、「CSR/SDGs/ESGの基本的な理解」について解説した。主な講義内容は下記の通り。

・サステナ経営を次のように定義した。「短期的な利益追求ではなく、中長期の視野に立って、財務領域と非財務領域の価値向上を同軸で目指すとともに、サステナビリティ(持続可能性)をあらゆる経営判断の局面において尊重し、社会に対する悪影響を減じるとともに、社会課題をビジネスで解決する努力をすること」

・サステナ経営には3つの要請がある。CSRは社会全般からの要請であり、ESGは投資家や株主からの要請、そしてSDGsは国連やNGO/NPO、各国政府や国際社会からの要請である。

・サステナ経営を実践する上で、「SDGsアウトサイド・イン」戦略でビジネスを構築することが重要。企業の「存在意義」は、市場の外(社会)にいる未来顧客を顧客に変えること(顧客創造)と定義することが重要だ。

・特に、このSDGsアウトサイド・イン戦略を持つときには、「バックキャスティング」の考え方がカギだ。対義語であるフォアキャスティングは現在から未来への長期目標を定める方法に対して、バックキャスティングは未来の目標を定めてから現在からのロードマップを策定するやり方である。

・代表的なのがオムロンで、同社は「ソーシャルニーズ創造」に取り組んできた。古今東西でこういった取り組みが行ってきた企業は、業界のトップ企業に成長している。森は参加者に「社会ニーズをつかむことで新しい顧客をつかむことができる」と呼びかけた。

③ワークショップ: 未理解点の洗い出し

時間: 14:35~15:55

講師: 森 摂

・ワークショップでは、オンラインと会場でそれぞれグループに分かれ、サステナブル経営に関する疑問点や課題などを話し合った。

・全体発表では、サステナビリティの社内浸透やDEI(多様性・公正性・包摂性)の考え方、収益性と持続可能性の両立などについて、質問が挙がった。

・講師の森は、「日々変化し、サステナ領域は試行錯誤の繰り返しで、担当者は答えがない道を進んでいかなければならない。世の中の潮流を見ながら、企業が描く『ありたい姿』を描き、そこに向かって進んでいく。『対立と分断』が深刻な時代だからこそ、より良い資本主義を目指して、企業は努力しなければならない」と激励した。

④サステナビリティの社内浸透

時間: 16:10~17:30

講師: 赤堀 久美子(リコージャパン株式会社 ESG戦略部ESGセンター事業推進室室長)

第4講には、リコーの赤堀久美子・ESG戦略部ESGセンター事業推進室室長が「サステナビリティの社内浸透」について講義した。主な講義内容は次の通り。

・SDGs/ESGを推進するため、企業は、経営戦略・システムへの組み込みや、自社の成長につながる展開、社員一人ひとりの腹落ち、取り組みの向上とステークホルダー視点でのコミュニケーションの4つを意識する必要がある。

・リコージャパンでは、事業とSDGsの同軸化も重視している。製品サービスを通じて顧客や自治体などのパートナーと取り組む。例えば、昨年発売した複合機では、ライフサイクルのCO₂排出量を従来比27%減らした。顧客と一緒に進めるSDGsの一環として、顧客が複合機を1台導入するごとにマングローブ植林を行っている。自治体との連携では、中小企業向けのSDGsワークショップ開催やデジタルツールを用いたイベントの活性化、関係人口の増大などを行っている。

・SDGs/ESGの社内浸透に終わりはない。トップ/ボトム双方の発信や取り組みが必要だ。リコーでは、2018年に社長が社員向けに「SDGsに貢献しない会社は淘汰される」とメッセージを送ったことが起点になった。社員への浸透を図り、レベルを向上させていくために、SDGs講演会や実際に取り組んでみるSDGsアクション月間、部門長向けのオンライン勉強会、eラーニングなどを展開した。

・リコージャパンでは、18年にSDGsキーパーソン制度を立ち上げた。キーパーソンが社内教育や社外への発信、顧客支援を行っている。社内イントラで積極的にナレッジやセミナー資料、顧客からの質問を共有している。

・キーパーソンによる社内浸透のステップとしては、まず情報発信でSDGsに関心を持ってもらう。その後に顧客にも伝えられるよう勉強会の開催や、社員それぞれの「My SDGs宣言」の共有などを行っている。こうした取り組みは、営業面でもSDGsを共通言語にして顧客が抱えている課題解決に資するなど、成果を出している。

・顧客向けには、オフィス見学会を開催しペーパーレスや脱炭素・省エネをどのように行っているかを見てもらったり、実際に顧客企業で実施していることを「RICOHサステナ見える化ツール」を活用して可視化したり、推進のサポートも行っている。

・2019年に当時の山下社長が「皆さんの仕事の一つ一つが、社会課題解決につながっている。誇りを持って語れるような社員であってほしい」と話した。これを大事にしている。リコージャパンでは、直近で「あなた自身の社会課題解決への取り組みは働きがいや誇りにつながっているか」に対して、9割超の社員が「つながっている」と回答した。