SUS部員塾17期下期第1回講義レポート

株式会社オルタナは10月20日に「サステナビリティ部員塾」17期下期第1回をオンラインで開催しました。当日の模様は下記の通りです。なお次回(17期下期第2回=2021年11月17日)もオンライン形式で開催します。17期のカリキュラムはこちら

①CSR検定2級テキストの概要

時間: 10:30~12:00

講師: 森 摂(オルタナ代表取締役・編集長)

有形資産と無形資産

【主な内容】

2級テキストは2021年11月に22年版を発行する。11月21日の受験は現行テキストからの出題となるが、サステナビリティ領域は日進月歩なので、常に新しいテキストを入手してほしい。合わせて学習するにあたり、押さえておきたい最新のトレンドを紹介する。

■4つのサステナビリティ領域

企業価値の創造には「これからのCSR」(広義のコンプライアンス、価値創造型CSR)が重要。だからといって「これまでのCSR」(狭義のコンプライアンス、社会貢献・フィランソロピー)を軽視して良いわけでない。両者に取り組むことが、企業のロイヤリティや従業員のモチベーションを高める。

■ソフトローとハードロー

ソフトローもハードローも重要性は変わらない。気候変動対策や海洋プラゴミ対策など、現在は法的拘束力のない取り組みも強制力を伴うハードロー化していく可能性がある。グローバルな情勢やステークホルダーの状況を見ながら「次は何がハードローになるか」を注視することが大切だ。

■パリ協定への対応

11月のCOP26で議論となる第6条(カーボンプライシング)に注目すべき。従来の京都議定書に代わる、新たなカーボン取引の世界的なルールが決まる。例えばEUが26年に導入する国境炭素税は「日本を対象外」としているが、まだ結論は分からない。

背景には深刻化する気候変動がある。IPCCの第6次評価報告書(21年8月発表)は「気候変動は予測より10年早く進んでいる」としている。今や気温上昇が「2℃を十分に下回る」は当たり前で、今後は1.5℃さえ下回る目標設定が求められるだろう。

■TNFD(自然関連財務開示タスクフォース)

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の考え方を、生物多様性を含む自然資本全体に広げたフレームワークが構築される。企業は情報開示にあたり、これまで以上にNPO やNGO、投資家ら外部ステークホルダーとの対話が重要になる。

■SXは変態(メタモルフォシス)

「サステナブル・トランスフォーメーション」のトランスフォーメーションは改革や変革よりも「変態」と訳すべき。変態とはサナギが蝶に変わるように、企業の姿が変わること(例:銀塩フィルムメーカーから素材メーカーに変わった富士フィルム)。

SDGsの「アウトサイドイン」を考えると、まだ見えない社会的課題に新たなビジネスチャンスがある。そのためには大胆な「変態」をいとわない姿勢を持つべき。

■サステナビリティ経営とサッカー

サッカーには3つの特徴があり、サステナビリティ経営によく似ている。

①攻守同時
②スピードが命
③グローバル感覚

米国が頂点にある野球と比較すると、その違いがよく分かる。詳しくは「オルタナ・オンライン」で解説しているので参照してほしい。

NPO事例紹介

時間:13:00-13:15

講師:渡邉 明男氏(認定NPOキーパーソン21副代表理事)

渡邉 明男氏(認定NPOキーパーソン21副代表理事)

【主な内容】

認定NPOキーパーソン21は、「わくわくエンジン」を掲げ、主体性を引き出し、生きる力を育むキャリア教育に取り組んでいる。同NPOは「自分を知る」「社会を知る」「自立する」力を身につけていくプログラムなどを行う。渡邉明男副代表理事は「子どもたちだけではなく、わくわくした大人たちが増えれば、地域も活性化する。人づくりから始まるサステナブルな社会をつくりたい」と語った。

②ESG情報発信とIR戦略

時間: 13:15~14:45

講師: 荒井 勝氏(日本サステナブル投資フォーラム会長)

荒井 勝氏(日本サステナブル投資フォーラム会長)

【主な内容】

サステナブル投資は、年金基金・金融機関・個人などの投資家が、その社会的役割を考えて、投資対象企業の社会課題への取り組みを評価して反映する投資を意味する。2006年ころからは、「ESG投資」とも呼ばれるようになり、財務情報に加えてESG(環境・社会・ガバナンス)を考慮した投資がメインストリームに変わってきた。

「Global Sustainable Investment Review」によると、世界のサステナブル投資総額は3654兆円に上り(2020年末)、これは日本の国家予算106兆円の34倍にあたる。

荒井勝会長は「財務情報の貢献度が低下している」と話し、「S&P500市場価値構成要素」が1975年は財務情報83%(非財務情報17%)だったのが、2015年は同13%(同87%)に転換したことを紹介した。

「サステナブルとは何か。それは将来世代の必要性を満たすことを犠牲にせず、現在世代の必要性を満たすこと。財務情報は過去の結果であり、企業の将来価値判断に必要な情報は、結果を生み出す資源・資本・システム活動の評価が重要である」(荒井会長)

「The Global Risks Report 2021(グローバルリスク報告書)」では、2021年のグローバルリスクとして最も高いのが「異常気象」、続いて2位に「気候変動対策の失敗」が挙げられている。

荒井会長は「気候関連リスクは、社会課題、地政学リスク、経済的リスクと深く関係している。世界中の人が、日本人と同じ生活をすると、地球が2.8個必要になる」とし、「私たちは地球の限界に突き当たっている。これまで経済学はこの『限界』を考慮してこなかったが、真剣に向き合わなければならない時代に入った。ESG投資とは、お金の使い方でもあり、資源の使い方でもあり、未来世代を考えることでもあり、哲学でもある」と話した。

③事例研究3:社内浸透 リコージャパン株式会社

時間: 15:00~16:30

講師: 太田 康子(リコージャパン株式会社 経営企画本部 コーポレートコミュニケーション部 SDGs推進グループ兼広報グループ)

コロナ禍以前は全国からSDGsキーパーソンが集まって3カ月に1回会議を開いていた

【主な内容】

リコージャパンには「SDGsキーパーソン」と呼ばれる社員が約400人いる。毎月オンラインで最新の社会課題を話し合い、各部署に伝える指南役だ。同社の社員数は約1万9千人だが、SDGsの認知度は99.6%(2019年1月)を誇る。SDGsを通して社会課題を伝えることで、新規の営業開拓にもつながっているという。

リコーの100%出資でできたリコージャパンは47都道府県に351拠点を持つ。デジタルサービスを提供する同社の強みは、「地域密着」だ。各都道府県に複数の拠点を持っており、地域の企業、自治体、団体、教育機関などとパートナーシップを組み、SDGsの達成に貢献している。

社内でSDGsの推進を担うのは、「SDGsキーパーソン」だ。2018年に自社のSDGsの取り組みを活性化する目的で作った制度であり、その数は413人に上る。制度を作った当初は3カ月に1回、全国からオフラインで集まり1泊2日をかけて研修を開いていたが、オンラインでの働き方が主流になった今ではオンライン会議に変わり、頻度は毎月に増えた。

最新のサステナビリティの潮流をキャッチアップしたり、各支社での取り組みを共有したりする。一般的にサステナビリティなど数値化できない領域の重要性は、売上目標を追う営業担当者には理解されない傾向にある。サステナビリティ担当者は社内浸透するにあたって、孤独になりがちだ。

そのため、オンライン会議はキーパーソンたちのモチベーションを上げることにも一役買っている。そこで話し合った内容を各部署に持ち帰り、各自の活動につなげている。同社の調査では、何らかの取り組みを行ったキーパーソンは73%に及ぶ。

社内でも着実に浸透してきた。2019年1月に実施した社内アンケートでは99.6%が「SDGsを知っている」と回答した。

同社は、「カスタマーズ カスタマー サクセス」という経営戦略を掲げている。顧客のその先の顧客まで届く価値を創出することを目指す考えだ。この考えを根本に置き、単に複写機を販売している会社から、自社のサービスで地域の課題を解決する会社を目指す。

リコージャパンのSDGs推進グループに所属する太田康子氏は、社内を変えるためには、「一人ひとりの個の力を信じることが大切。個人の意識変革をあきらめずに地道に繰り返していけば必ず変えられると思います」と強調する。

④企業事例8:積水ハウス株式会社

時間: 16:45~18:15

講師:小谷美樹(こたに・みき) 積水ハウス株式会社 ESG経営推進本部 部長

小谷美樹氏(積水ハウス株式会社ESG経営推進本部 部長)

【主な内容】

積水ハウスは、昨年創業60周年を迎えた。同社は、2020年からの30年間を「第3フェーズ」と位置づけ、「『わが家』を世界一幸せな場所にする」をビジョンに掲げる。

■ESG経営推進3つの方針

同社はESGを経営の基盤として、取締役会の下にESG推進委員会を置く。抽出した課題を「先進的な取り組み」「社外評価」「全従業員の参画」という3つの方針に分けて推進する。

■全従業員の参画

中でも同社独自の取り組みが全従業員参画のための施策「ESG対話」だ。これは全従業員がグループに分かれて「事業を通して従業員お客様社会を幸せにするには」というテーマで語り合うもので、ESGを理解し、内部から創発する組織文化の形成を目的にしている。

また「幸せ度調査」という個人の幸せ、組織の幸せを統合する調査・分析を日本で初めて取り入れた。「働く幸せの因子と不幸せの因子が両方高いこともある。そうしたパターンを見える化することで、幸せ作り、感謝作りにつながる」と小谷部長は語った。

■地域から社会課題に向き合う取り組み

ESG情報を発信する場として「積水ハウスのつながるカフェ」という誰でも参加できるウェビナースタイルのプラットフォームや、社会貢献活動として「積水ハウスマッチングプログラム」という寄付制度もある。これは従業員が給与から寄付金を積み立て、それと同額を会社も寄付するというシステムだ。21年度はNPOなど49団体に4900万円の寄付が集まった。

■専門性を生かしたSDGsへの取り組み

専門性を生かしたSDGsへの取り組みとして、小学校への出張授業やプログラミング教育、展示場で住教育プログラムなども実施している。従業員の幸せにつながる取り組みを通し、自分のスキルが社会に役立つ体験してもらう。

小谷部長は「こうした活動などのイベントに積極的に参加する人がESG浸透の協力者になってくれる」と述べた。

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