サステナ部員塾18期上期第2回レポート

株式会社オルタナは5月18日に「サステナビリティ部員塾」18期上期第2回をオンラインで開催しました。当日の模様は下記の通りです。

①3級教科書ポイント解説

時間:10:30~11:45
講師: 森 摂(株式会社オルタナ 代表取締役 オルタナ編集長)

オルタナが主催しているCSR検定3級試験の重要ポイントを解説した。CSR検定3級試験は2015年から毎年4月と10月にオンラインで開催しており、これまでに9831人が受験した。1~4級まであるCSR検定の中では、CSRの基礎として位置付けている。累計の合格率は67.5%だ。

講義では、3級教科書の重要ポイントとして、コンプライアンス、SDGsとアウトサイド・イン、ステークホルダー、国連グローバルコンパクト、ビジネスと人権などのキーワードを解説した。

MDGsの採択(2000年)からSDGsの採択(2015年)までの流れ

サステナビリティ領域の歴史的経緯についても説明した。オリバー・シェルドン(英国)が1924年にCSRを始めて論文に使ったことから、1950~70年代の公害病・光化学スモッグ、1992年のリオ・地球サミットなどサステナビリティ領域の重要な出来事を紹介した。

2000年代に入ると、2003年の「CSR元年」(ソニーやリコーなど大企業のトップランナーが専門部署設立)を皮切りに、ISO26000(2010年)、マイケル・ポーター氏のCSVの発表などの出来事が続く。2015年はSDGsやパリ協定が採択され、サステナビリティの転換点とも言われる年を迎えた

講義ではこうした流れを、冷戦終結(1989年)からMDGsの採択(2000年)まで、MDGsの採択(2000年)からSDGsの採択(2015年)までに分けて解説した。

ミニプレゼンテーション:非営利組織向け「グッドガバナンス認証」とは

時間:11:45〜12:00

講師:浦邉 智紀( うらべ とものり )氏(一般財団法人 非営利組織評価センター(JCNE)広報担当・リーダー)

企業が社会課題解決し事業成長を図るためのパートナーとして、NPO(非営利組織)の存在感が増している。NPOを探す一つの目安として、JCNEが行っている、NPO(非営利組織)の認証制度「グッドガバナンス認証」について紹介した。

日本には約14万団体(2020年8月)のNPOがある。うち51047団体が法人認定を受けているが、43%の活動実態が不明で、事前に信頼性を調べることが重要になる。

「グッドガバナンス認証」は、市民参加の度合い、環境配慮、財務情報、情報発信など27の基準で評価・認証を行い、53団体が認証を受けている。

もう一つの認証制度として「ベーシックガバナンスチェック」(法令・定款にもとづく基本を確認)もあり、340団体が認証を受けている。

その他に内閣府が公開するNPOの情報もあり、これらも参考にガバナンスが機能している団体か、中長期的に活動する意志があるかなどを確認するとよい。

情報収集を行い、条件を絞っていくつかのNPOを選んだ後は直接会って会話をし、最終的にパートナーシップを組むかを決める。対話をするとSDGsへの価値観など、互いの理念を確認できる。

②サーキュラーエコノミーと海洋プラごみ問題

時間:13:00〜14:15

講師:マクティア·マリコ 氏(一般社団法人Social Innovation Japan共同創設者·代表理事)

プラスチックごみ問題の背景、その解決策としてのサーキュラーエコノミー、国内外の取り組み事例を紹介した。

プラスチックごみ問題は「環境問題」だけでなく「健康問題」とも大きく関係している。海には毎年800万トン(ジャンボジェット5万機分)のプラスチックが流失している。それは細分化(マイクロプラ)し食物連鎖をへて、人間の体に蓄積。1週間にクレジットカード1枚分を摂取しているという研究結果もある。

「気候危機」とも関係しており、プラスチックは製造〜廃棄のライフサイクルを通してCO2を排出する。日本はリサイクル率84%としているが、多くは「サーマルリサイクル(熱回収)」の名目で焼却しCO2を出しており、海外ではリサイクルと認められていない。

プラスチックごみ問題の解決には「サーキュラーエコノミー」への移行しかない。従来の方法(リニアエコノミー、リサイクルエコノミー)ではどうしても廃棄物が出る。サーキュラーエコノミーでは全てリサイクル可能な設計とし、原料を廃棄せず循環させる。リサイクルに加えてプラ容器を捨てずに繰り返し使う「リユース」も大切になる。

世界ではプラスチックごみ対策を求める国際条約を2024年までに成立させることが決まった。日本でもレジ袋有料化を経て22年4月に「プラスチック資源循環促進法」が施行。一市民としてできることに限界があるので、国や行政がルールを作り規制を設けることが重要になる。

規制があるからこそ企業は長期計画を立てやすくなり、イノベーションが生まれ、投資が集まりやすくなる。

すでに動き出している企業もある。25年までにバージンプラ50%削減を掲げたユニリーバ、イオンと米テラサイクルによる循環型ショッピングプラットフォーム「LOOP」、野菜・果物の裸売りに踏み切った英国のスーパー、レンタルカップやグラスでの提供に切り替えたスターバックスコーヒーなどの事例を紹介した。

プラスチックごみの削減には、私たちも参加して社会の仕組みを変えなければならない。日本では年間245億本のペットボトルが消費されているが、「喉が渇いたら自販機」という習慣をやめて「マイボトルを持ち歩く」文化になれば問題を解決できる。

各地の無料給水スポットを検索できるアプリ「mymizu」は、47都道府県で1850カ所以上が登録。自治体(神戸市、京都・亀岡市)との連携も生まれている。ペットボトル削減はあくまでも最初の一歩で、「サーキュラーエコノミーで一緒にシステムをリデザインしていきましょう」と、マクティア氏はプレゼンを締めくくった。

③WS(SDGsアウトサイドイン①)

時間:14:30~15:45
講師: 森 摂(株式会社オルタナ 代表取締役 オルタナ編集長)

サステナビリティ部員塾では「アウトサイドイン」を体験するワークショップを2回に分けて開催。前半となる今回は、グループごとにパイロット企業を設定し、「SDGs×SWOT分析」を行った。どの領域に事業上の機会があり、新たなビジネスを作っていけるかを議論した。次回は、社会課題を解決するビジネスアイデアを検討し、発表する。

④企業事例:日産自動車のサステナビリティ戦略

時間: 16:00~17:15
講師: 田川 丈二 氏(日産自動車株式会社 専務執行役員)

日産はコーポレートパーパスとして「人々の生活を豊かに。イノベーションをドライブし続ける」を掲げる。同社は2021年1月にカーボンニュートラルを宣言。2030年代早期に主要市場で投入する新型車をすべて電動車両にし、「2050年までにクルマのライフサイクル全体におけるカーボンニュートラル」の実現を目指す。UNFCCC(国連気候変動枠組条約)事務局が主催するグローバルキャンペーン「Race to Zero(レース・トゥ・ゼロ)」にも日系自動車メーカーとして初めて参加を決めた。

田川専務執行役員は、「当社は他社に先駆けてカーボンニュートラルにつながるユニークな取り組みを進めてきた。2010年には世界初の量産EVとなる『リーフ』を発売し、50万台以上を販売した。先んじてEV開発に取り組んできたことは、バッテリーの技術開発の強みにもなっている」と話す。

同社は世界各地でクルマとモノをつなげる「V2X」の価値を広げる活動を行っているという。「自動車はほとんどの時間停車している。その停車時間の価値を上げるため、日産EVに貯めた電力を活用する取り組みを進めている。災害時にも蓄電池として使える。V2Xが日本や世界に普及していけば環境に大きな貢献ができる」(田川専務執行役員)。

各拠点で、再生可能エネルギーの利用と普及を推進している。欧州におけるカーボンニュートラルの実現に向け、世界初のEV生産のエコシステムを構築するハブとして「EV36Zero」を発表。新世代のクロスオーバーEVを生産する英工場(サンダーランド工場)には、ボリス・ジョンソン英首相も訪れたという。

2021年1月には、北米で販売を開始する新型「ローグ」に日産のグローバルモデルとして初めてアルミニウム製部品のクローズドループ・リサイクルプロセスを適用したことを発表した。

「規制だから対応するという時代ではなく、いかにサステナビリティを企業価値向上につながるのかが重要だ。エネルギーや原材料をどこかの国に依存しているより、何度も使い、リサイクルできる会社が、競争優位になる。サステナビリティはゆるぎないものだ」(田川専務執行役員)。